鏡餅に乗せる果物は元々は橙の実
お正月になるとおせち料理やお汁粉の他に用意する鏡もち。最近は飾る人も減ってきたかもしれませんが、お正月の定番商品の1つです。そんな鏡もちですが、風物詩だからとなんとなく飾ったりしている方が多いようです。実は、鏡もちはきちんとお正月に相応しい意味を備えているのです。
鏡もちにちょこんと乗っている果実ですが、正式にはオレンジの実です。日本では「だいだい」といわれる柑橘類です。今はミカンを飾るところが多いですが、それは時代の変容に理由があるそうです。大昔には本来の意味での橙の実を飾っていたのですが、時代の変化により鏡もち自体が小型化していき、それに従って上に乗せる橙もより小さいミカンに変わったようです。地方によっては未だに橙を正月に飾っている所もあるみたいです。
ちなみに平安時代では鏡もちは2段重ねではなく、1段だけでした。平安時代の書物「類聚雑要抄(るいじゅうざつようしょう」に書かれています。橙を飾る意味ですが、それは橙の実のなり方に理由があります。一度実がなると、4~5年以上落果しません。代々=だいだい。家系代々の長寿・繁栄を願い縁起が良い果実として鏡もちに乗せられるようになったのです。
江戸時代前に橙に込められた不老長寿への憧れ
橙には子孫繁栄の意味が込められていますが、もう1つ不老長寿の意味もあります。実は、橙が代々続くといわれ始めたのは明治になってからなのです。それまでは、橙には若返りの意味が込められていました。先ほど紹介した書物「類聚雑要抄」に橙ではなく橘として書かれていて、当初は橘(柑橘類の原種)の名前で鏡もちに飾られていたようです。
なぜ若返りの意味で使われていたのかですが、橙は実がなると翌年の春にはオレンジ色が濃くなります。しかしそのまま収穫せずに放っておくと、夏になる頃にはまた青い実へと若返ります。このことから橙の実は不老長寿を願って鏡もちに飾られていたようです。健康に若々しく長生きしたいという想いは、悠久の昔から人々の心にもあったということですね。